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適当に夕食を作り終え柊佳の様子を見に行く
ノックをしてドアを開けると、気配で起きたようだった
「少し、休めたか?ご飯作ったけど、少しでも食べれそうか?」
「…………」
「…電気、点けるよ?」
そう言って部屋の電気を点け、柊佳の傍に行く
「柊佳、何があったのか兄ちゃんに……」
声をかけながら、ゆっくり柊佳の体を起こし顔を覗き込み手が止まった
柊佳の左頬の辺りが明らかに殴られた痕のように見える
「……柊…佳?これ…これ誰にやられたんだ?!」
髪をよけてよく見ると、唇の端も切れている
柊佳は黙って首を振る
「知らない奴なのか?……とりあえず病院に行こう。それから警察だ。父さんに話して来る。急がなくていいから準備してて」
くそっ!すぐに柊佳の状態を確認すれば良かった!
急いで父の元へ行こうとすると、ぐいっと服を引っ張られた
「?…柊佳?どうした?1人で居るのは不安か?すぐに戻って来るから…」
「…行かない………」
「?」
「…病院も…警察も…行かない……だから、お父さんにも言わないで…」
家の事を考えてるのか?
「大丈夫だ。家の事なんか気にしなくていい。今は柊佳の体の事だけ考えよう?」
安心させる為にそう言うと、
「…お父さんにも……誰にも話したくない…」
話したくない?
脅されてんのか?
「……わかった。柊佳が話してもいいと思うまで、父さんに詳しい事は話さないし、警察にも行かない。でも、出来れば病院には行って欲しい」
「………怪我は…左の頬殴られたのと、手首とか抑えられただけ……何日かしたら良くなる…」
手首とか抑えられた?
「柊佳…兄ちゃんに何があったのか教えてくれないか?兄ちゃんに話すのも…嫌か?」
柊佳の隣に座り手を握る
少しの間を置いて…
「………お兄ちゃん…」
「うん」
「…昨日……夕方…コンビニに買い物に行ったの…」
「うん」
柊佳が両手で俺の手を握る
「……行く途中、大学生位の人達が3、4人でたむろってた。別に知らない人達だった。通り過ぎて少し歩いてたら、急に腕引っ張られて……近くの路地に連れてかれた……」
「…そいつらが殴ったんだな?」
なるべく気持ちを落ち着けて話す
「……壁に押し付けられて、逃げようとして声出したら殴られた……体押し付けて…きて…コート脱がされて…両手…抑えられて……」
「柊佳…わかった…もういい…言いたくなかったら言わなくていい」
体を引き寄せて震える肩を抱き締める
「……服の上から…色んなとこ触られて……そのうち冷たい手で胸触られて…」
「柊佳、もういい」
頭や背中を撫でてやる
「……退屈だったからって…凄く楽しそうに笑ってた……下も脱がされそうになった時、大通りの方から声が聞こえて…あの人達逃げてった…」
昨日の夕方…それから柊佳はずっと1人で…
「…ごめんな柊佳。兄ちゃん昨日電話しなかった。1人で心細かったな。ごめんな。こんな時傍に居なくてごめんな」
どんなに忙しくたって電話一本すれば良かった
「…うっ…お兄ちゃん…誰にも知られたくない…何されたか知られたくない…うっ…うっ…」
泣きながら抱き付いてきた
「…わかった。誰にも言わない。約束だ」
本当はそいつらを探し出して殺してやりたい
でも、そいつらの情報は柊佳しか知らない
もう一瞬でもそいつらを思い出させたくない
父には、知らない奴等に怖い思いをさせられてショックをうけているが、病院に行くほどではないと話しておいた
何か言いたげではあったが、
「…そうか、わかった」
とだけ言った
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