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「碧、夏休み実家帰るんだろ?」
そろそろ夏休み
実家を出て寮で暮らしている碧は、毎年数日実家に帰る
碧が実家に帰るのは構わない
ただ、碧が居ない間に来る奴が問題だ
「そのつもりだけど何かあんのか?帰るタイミングはお前に合わせるけど」
「いや…別に…」
菊の紋様を持つ者、継ぎ人に対して、継ぎ人を護る護り人
碧は俺の護り人だ
継ぎ人のように何か印が現れるわけではなく、決まった家の者達が代々受け継いでいるらしい
年齢や性格、護り人としての能力、その他諸々を加味して決められ、現在の継ぎ人と、おそらくこれから継ぎ人となる俺、それぞれに常に1人ずつ付いていれる状態にしているとのことだ
1日の大半を一緒に過ごすことになる奴が、同じ歳で同性の碧だったのはラッキーだった
でも、碧にしてみたら、中学から知らない土地で独り暮らしなんだから、いい迷惑だよな
「そんな顔すんな。今回は2泊3日で戻って来る」
「え!なんで?もっとゆっくりして来いよ」
いつもは1週間位は帰って来ないのに
「まあ、色々思うところがあってな。って、顔が笑ってんぞ」
やった!あいつと居る時間は少しでも短い方がいい
「なんでそんなに雪兎さんのこと毛嫌いするかな?大人だし、優しいし、いい人だろ?」
「……いい人か?」
「え?何?」
ボソッと呟いた言葉は碧には聞こえなかったらしい
「何でもない!さっさと家帰ろうぜ」
碧に言ったところで、他の人に変えてもらえるわけでもないんだから、碧の心配事を増やすだけだ
週末と長期の休みの間は、寮に届け出を出して俺の家に泊まる事がほとんどだ
3年もそんな生活してきたので、もうほとんど兄弟みたいなもんだ
一緒に夕飯を食べ、一緒に風呂に入る
「やっぱ樹のおばさんが作るハンバーグは絶品だな」
「そうか?レンコン入ってるだけだろ?」
俺にとって昔から変わらないハンバーグは、碧の中でパーフェクトな物らしく、それを聞いた母さんは1ヶ月に1~2回は碧が来る日に合わせて作るようになった
「ばぁか。そのレンコンの大きさ、ショウガの量、味付け、その他諸々全てが完璧なんだよ」
「あっそ」
もう何度も食べてるのに、ほんと好きなんだな
「そろそろ出るか」
そう言って湯船を出て、鏡を思い出す
まあ、今日は碧が居るからいいんだけど
鏡を見ていると、
「…少し、色変わったか?」
碧が湯船の中から声をかける
「そうかぁ?毎日見てるからか、あんまり変わったようには見えないけど…これって色変わったりすんの?」
「さあな。実物を見るのはお前のが初めてだし、形に関する情報はあるが、色に関する情報はあまりないんだ。ああ、雪兎さんならもしかして知ってるかもしれないな。あの人の知識量は凄いからな」
そう言ってさっさと着替え始める
俺があの人のこと苦手だって知ってるくせに
「別に知らなくていいし。ってか、神社から出なきゃ護り人なんて不要だろ?3日位神社から出ないで居れるよ。だからお前の代わりなんて来なくていいよ」
着替え終わりメガネを着用した碧が溜め息混じりに、
「駄目だ。俺がそう思っても上から許可が下りるとは思えない。隠逸花が突然花開くことはない。必ず蕾の段階を踏むからだ。だが、蕾から花が開くまではどのくらいなのか予想出来ない。これまでの統計でも個人差がかなりある。お前のはすでに蕾だろ?ぶっちゃけ明日花開いてもおかしくないんだ。隠逸花の開花、そうなったら…」
「はいはい、わかりました~。言う通りにしてりゃいんだろ?たった3日間、あのうざい兄ちゃんとも仲良くやるさ」
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