開闢相伝

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冬休み 碧は年末年始4日間だけ実家に戻った 当初2日間で帰って来ると言ったが、さすがにそれは年越しなのに忙しな過ぎるだろうと、父さんと母さんが説得して4日間になった 碧は最後まで迷ってるようだったが、雪兎さんに追い出されるように行った 年末年始にわざわざ出掛けなきゃならない用事もなく、有難いことに初詣も家の敷地内で出来るので、冬はほんとに雪兎さんが俺の傍に居る意味がない それよりも、このくそ忙しい時に神事を知り尽くしている雪兎さんは、毎年ほぼ父さんの助手のように働く もちろん俺も出来る事はしなきゃなんないから、実質雪兎さんと関わる時間はほとんどないまま3日間が過ぎた 「つっかれた~」 なんだって神職の服ってこんなに寒いんだよ 時代に合わせてもっと快適な服装に進化させてくんないかな 湯船にゆっくりと浸かると体の芯まであったまる 「あったまる~」 考えてみたら、いや、考えなくたって、碧も雪兎さんも実家は神社なんだから、今忙しいんだよな 碧はせっかくの里帰り、手伝いで終わるだろうし、雪兎さんだって手伝うんなら自分の家手伝いたいだろうし ザバっ なんだかなぁ 継ぎ人になる人には、チート的な能力とか与えてくれたら良かったのに そしたら周りの人達をこんなに振り回さなくたって良かったんじゃ… ん? あれ?今なんか… なんとなく見た鏡を見直す ん?なんかこれ…蕾じゃなくなってる? 鏡をシャワーで洗い流しよく見る 花が開いたわけではない けど、蕾と言うには花の先端が離れて膨らんでる様に見える ………マジか これ、雪兎さんに言わなきゃダメかな? 明日には碧が来るんだから、明日でも良くね? 「う~~~……よし!とりあえず碧に電話しよう。うん、そうしよう」 まだ蕾っちゃ蕾だし 「さっさと今すぐ雪兎さんに報告しろ!」 「うっ……」 甘かった 言わなきゃ良かった 今日は気付かなかったってことにしとけば良かった 「後で俺も雪兎さんと連絡取るから、すぐ知らせに行け!」 「わかった……」 あ~あ、後1日遅かったらなぁ しょうがない 雪兎さんは… 「遅くまでありがとうね雪兎君。お風呂でゆっくり温まって」 「はい、ゆっくり入らせてもらいます」 ちょうど帰って来た うわぁ…出来る事の違いがあるからしょうがないっちゃしょうがないけど、俺が風呂入ってる間もまだ仕事してたのに、こんな面倒なこと今言いたくね~ でも碧が連絡した時知らなかったってわけにもいかねぇしなぁ 「あ、雪兎さん、あの…ちょっと話しておきたい事があるんですけど…」 「ん?樹君お風呂入ってたの?湯気が上がっててあったかそうだね~」 うわぁ めっちゃ嫌味~ しょうがないけどさ~ これこれ、この笑顔なのに目が笑ってないやつ! 写真撮って碧に見せたい 「すいません。あの、詳しくは風呂入った後でいいんですけど、後で碧が連絡するって言ってたので、一応軽くだけ説明しますね。俺の菊が…って、えっ、ちょっ…」 まだ話してる途中に雪兎さんが近づいてきて、Tシャツを捲り上げパンツを下にずらす 「………なるほどね。花笑み…だな」 「え?はなえ?…これ…すぐに咲くんすか?」 俺から手を離して一呼吸置き、 「…蕾からは個人差が大きいんだ。樹君みたいに蕾から咲き初めの段階を踏む者、蕾から突然咲く者。そして咲くまでの期間も皆ばらばらだ。ただ、蕾からすぐに開花しなかったのなら少し猶予がある場合が多い。これまでの統計でいけば、の話だけどね」 やっぱ碧の言う通り、この人はきっと色んな事知ってんだろな 「じゃあ、とりあえず今すぐ何かするってわけではないんですね?」 「まあ、そうだね。何かするのは僕達だけだ。一応樹君の隠逸花が蕾になった時点で、いつでも継承の儀が執り行われるように準備は進めてあるんだが、本格的に準備しといて良さそうだね。樹君のご両親にも話しておくよ。儀式を行う場所はここではないし、ご両親がここを離れるわけにはいかないだろうし、心配だろうからね」 俺の知らないところで沢山の人が動いてんだなぁ そうか、ここじゃないなら、そりゃ親も詳しく知らないと心配だよな そういうとこやっぱ大人だよなぁ 「はあ。じゃあ、お願いします。あ、でもまず、お風呂どうぞ」
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