開闢相伝

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菊の紋様が形を変えて2週間 そろそろ正月の忙しさも落ち着き始めた頃、菊の花が開花した 準備が整ってた事もあり、次の土日に儀式を行うという事になった 儀式まで俺がしなきゃならない事と言えば、動物の肉を食べない、髪を切らない、毎日体を清める等、食事以外はたいしていつもと変わりない 碧は時間があると色んな人達と連絡を取り合ってて、もう儀式が終わるまで学校休もうかなと思うくらいだ 「大丈夫か?碧。お前、ちゃんと寝てる?」 「ああ、起きてる間が忙し過ぎて毎晩熟睡だ」 状況が状況だけに、うちの両親と碧の両親から学校に願い出て、儀式終了まで碧は家に泊まっている 湯船にもたれかかったまま、今にも寝てしまいそうだ 「なあ、俺なんか手伝える事ないの?」 碧が眼鏡をかけ直す 「いや、ない。こっち側の問題だ。準備は大体出来てるんだ。ただ、何十年に一度の事だから皆心配なんだよ。儀式自体は簡単なもんなんだ。現在の隠逸花から樹に『開闢(かいびゃく)』が継承される。おそらく数分で終わるはずだ」 「かいびゃく?ってか、数分で終わんの?」 たった数分で終わる事の為に、碧も雪兎さんも沢山の人達もずっと準備してんの? 「開闢ってのは、菊の紋様を持つ物が継承する物のことだ。実際には形はないが、便宜上そう呼んでいる。継承自体は数分だが、一応神事の中でも最重要神事だからな。場を清めたり、隠逸花二人の周りに結界を張ったり、恙無く《つつがなく》事が終わるように祝詞をあげたり、まあ、その他諸々あるのさ」 考えただけで頭がいっぱいになりそうだ 「実際には形がないって、俺それちゃんと受け取れるのか?」 なんか自分の事なのに全くイメージがわかない 「菊がはっきり見えてんだから大丈夫だろ。それに、儀式中隠逸花が何かしなければならない事はないとされている。実際見た事がないから詳しくはわからないが、開闢自体が継承を行なうと記されている。樹はただ行儀良く座ってればいい」 そうだった この菊、誰にでも見えるわけじゃないんだった 父さんは普通に見えた けど、母さんはうっすらしか見えない こんな変わった模様が体にあるなんて、着替えの時とか、どう隠そうと思ったけど、周りの奴等には全然見えてないようだった 「ま、ここまで来たらやるしかないか!」 風呂から上がり着替え始める 最後にTシャツを手に取ると、 「待て待て」 ん? 同じく上半身肌の碧がしゃがみ込んで、俺のパンツを下にずらしながら、菊の花を凝視している もう開花したってのに今更何をそんなに見てるんだ? それにしても傍から見たら相当変な構図だぞ 「どうかしたのか?」 「ん~…俺の見間違いかと思ってたけど、やっぱこの菊、少しずつ白くなってきてないか?」 白の画用紙に描かれたわけではないので、何色って言われると難しいけど、確かに子供の頃は薄い茶色っぽかったような… 今は…薄い灰色? まあ、見ようにやっては白に近い灰色? 「確かに白っぽくなってるかもな……どうする?白い菊は凶事を表すものだったりしたら」 俺がニヤニヤしながら言うと、碧が立ち上がりながら、 「はぁ…。お前、よく自分の体に出てる物のこと、そんな風に言えるな。仮にも神事に携わる者なら言霊ってものがあるんだから、普通思っても口に出さないだろ。呆れを通り越して尊敬するわ」 氷の瞳になった碧が言いながらTシャツを着る 「んだよ、深く考え過ぎなんだよ。お前まだ10代なのに、今からそんなんじゃストレスで20代には禿げるぞ。むぎゅっ」 碧が思いっきり俺の口をすぼめてくる 「だから、言霊っつってんだろ。俺が20代で禿げたらお前のせいだからな。責任取れよ!」 責任? 俺の髪移植するとか? 育毛剤買い続けるとか? ○―トネーチャー買うとか? 「ふぁい。頑張ってふぁたらきましゅ」
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