episode1

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「はい席着いてないー」 「……ああもう、うざ……」 別に席に着いていないと遅刻とかいうルールないだろ。なんなのこいつ、心の成長小学生で止まってんの? 「織田さん、早く席に着いて。委員長、号令」 「起立!」 「気をつけ、礼」 「お願いします!」 こうして無事に一時間目を迎えた私、 ここで最悪の事態に気付く。 「歴史の用意、忘れた……」 そんな私の独り言に、斜め前の席から振り返った颯が「はいおつー」と言ってきた。 ……黙れぇぇぇ。 ☆☆☆ 「いやぁ瑞姫、災難だねぇ」 「そうなの、でもね自分が悪いの、これは」 「え、珍し。瑞姫がちゃんと自分で責任を負うなんて」 「どういうことよそれ。私がいつも他人に罪をなすりつけてるってこと?」 「まあ、割と……」 「え、どこが?」 隣の席の人に教科書を見せてもらい、前の席の人からルーズリーフをもらい、なんとか歴史を乗り切った。そして休み時間、友人の百田(ももた)(みどり)長岡(ながおか)結依(ゆい)が私の席に来てこんなことを言ってきたのだった。 「でも今日寝坊したの最悪だった。誕生日なのに」 「あ……やば」 「ちょ、翠まさか忘れてたなんてことは……っ」 「えへ、ごめん」 「結依は……」 「ごめんなさーい!」 「もー。私は二人の誕生日ちゃんと覚えてるのにー!」 「ごめんって!でもなんで忘れたんだろ。七月七日とか、めちゃくちゃ覚えやすいのにね」 「それな。私もなんで忘れてたかわかんない。明日プレゼント渡すね」 「……ありがと」 「それでさ、あんた次の授業はちゃんと持ってきてるよね?」 「次って」 「数Ⅰ」 「……数Aならあるよ」 「ないんじゃん!ねえ今日何持ってきたの……?てこれ、全部昨日の授業!」 「通りで床に散らばってたわけだな……」 「今からでも遅くないよ。他クラスの人に借りてきたら?」 「……そーする」 ああ、泣ける。でもそれは全部自分が寝坊したせいだ。自分のせいだ。 私は教室を飛び出した……ところで、チャイムが鳴る。え、そんなに時間経ってたの? もうまもなく二時間目が始まる。また周りの席の人に迷惑かけることになってしまった。
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