死にたがりのシャッター

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 音楽番組で「なつ歌特集」なんてコーナーがあると、詩音のデビュー曲が流れて、腫れ物に触れるようにしんみりしたナレーションがつくのが、真希は許せない。  真希にとって、詩音は懐かしい存在じゃない。あんなことがなければ、今だって新しい曲を作って、伸びやかに歌っていたはずなのだ。  詩音がこの世を去ってから、真希もまた絶望し、同時に怒りを溜め込んできた。  未来ある親友を追い詰め、死に至らしめたたちは、今日もどこ吹く風で生きている。  できることなら全員呪い殺してやりたい……。  そして真希が、その最初の一人に選んだのが、自分自身だった。 「彼女を追い詰めたのは、わたしだもの」  詩音からのSOSに、真希はいつも「大丈夫だよ」と応えてきた。詩音の歌は素晴らしいから、誹謗中傷なんてものともせずに、聴く人の心に刺さるーーそう絶対的に信じていた。だから「大丈夫」と、真希は心からエールを送ったのだ。詩音に前向きさを取り戻してほしくて。真希がついていると、信じてほしくて。  詩音が最後にくれた電話の声が、耳に残っている。 『もうムリ……ぜんぜん大丈夫じゃないんだぁ……』  それにも真希は、「そんなことないよ」「わかってくれる人はいっぱいいるよ」なんて、言ってしまった。  翌日、詩音が自室の窓から飛び立つなんて、微塵も疑っていなかった。
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