死にたがりのシャッター

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「今ならわかる。詩音は、大丈夫なんて言われたくなかったんだって。……逃げてもいいんだよ。強くなくていいんだよ。どうしてそう、言ってあげられなかったんだろう」  ずっと一緒にいたのに、詩音の痛みに寄り添っていなかったことに真希は気付いて、深く絶望した。  死んで償ったって、詩音は帰ってこない。追いかけていったって、こんな酷い幼馴染の顔は見たくないだろうとも思う。 「だけどわたしは、わたしが許せない。詩音を殺したやつは、死んで当然なのよ。わたしなんか、死んでしまえばいいんだ」  再び咽び泣く真希の足元を、ロディが右往左往する。黙って聞いていたレイが、静かに呟いた。 「君が死ねば、彼女は本当の本当に、死んでしまうのに」  アルバムの中の、純粋無垢にギターを弾く詩音を見つめて……。 「これからは、メディアやどこかの誰かが語る彼女の断片が、詩音という形を作って、人々に記憶され……生きていくんだ。君や俺が知っている本当の彼女は薄れ、忘れられていく。記憶から消えたものは、存在しないのと一緒だ」  それは本当の死だよ、そうレイは瞳を伏せた。
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