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「よろしければ、そちらのリュックを見せていただけますか?」
「ご、ごめんなさいっ。結萌ちゃんに言われて来たんですか?」
「あらあら、何のことでしょう」
とぼけた様子の蝶に、絵麻はむっとしたようだ。
「わたしがやったって、結萌ちゃんが言ったんでしょ? もうバレてるんでしょ?」
青い顔だが、言葉尻にどこか怒りを孕んだ絵麻を、蝶は貼り付けた笑顔で見守って、ゆっくりと首を横に振った。結萌はまだ純粋にムースを探し続けていることを伝えると、絵麻は泣きそうな顔になって、ゴミ袋を蝶に差し出した。
きつく結ばれた口を解き、ピンクのリュックを引き摺り出す。どこも目立った汚れはなく、まだまだ使えそうだが、絵麻は目を逸らして絶対に見ようとしなかった。
リュックのファスナーを摘んだ蝶の口の端に、笑みが浮かぶ。
「さあ、こちらに仕舞い込んだのは、どんな秘密でしょうか。真実、それとも」
罪、か──。
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