蝶の店

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 二人は蝶と別れて、鵜之沢家へ向かった。  ムースをケージに帰してようやく、結萌はほっと息がつける思いがした。 「ねえねえ、結萌ちゃん」 「どうしたの、絵麻ちゃん」 「今日のわたし、どこか違うと思わない?」 「えー、どこだろう?」  結萌は足を止め、絵麻を観察する。栗色のポニーテール、クラスで一番可愛いと言われる目鼻立ちの整った顔。結萌より三センチメートル大きい背。ちょっと泥のついた、スポーツブランドのスニーカー。  頭の天辺から爪先までまじまじと見つめたせいか、いつもより少しそわそわしている様子だ。  結萌は指を鳴らした。 「あっ、わかった! 新しいリュックにしたんだね、可愛い!」 「……当たり。よくわかったね?」 「わかるよぉ。仲良しだもん!」  はにっこりと笑い、かつて自分が住んでいた家を見つめる。  その小さな筺の中ではカラカラカラ……と、虚しい音を立ててが走り回っていた。 第四話に続く その前に蝶の店の始まりに関する閑話を挟みます ーーーーーー ◇柘植(つげ)万里(まさと) 一生のお願いで、(己の寿命の限り)動物が悲しまなくていい世界を作っている
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