死にたがりのシャッター

7/19

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
 ボールは木々にぶつからなかったが、どうやら青年に直撃したらしい。背中を撫でる彼に、真希はしゃがれた声で平謝りだ。  今、真希は彼の後について駐車場へと向かっている。  憚りなく泣き崩れた真希に、青年は手を差し伸べてくれた。訳は聞かず、こんな所からは早く出た方がいいと、先導を務めてくれたのだ。  登山者とは呼べないカジュアルな服装は、鬱蒼とした木々の中で見るからに不自然だ。それは真希にも当てはまるのだが。  普段の真希なら、もう少し慎重になって、男の後にはついていかなかったはずだ。それなのにこうして彼の辿る道を頼りに引き返しているのは、ロディが警戒していないことが一番の理由だ。それとともに、もしかしたら彼も同じなのかもしれないと、どこかで思っているからだろう。妙な親近感、いや、シンパシーか。  何者か気にも留めなかった。  駐車場に着いて、打ち捨てられた倉庫のような建物のシャッターを、彼が押し上げるまでは──。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加