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噂によれば、そのチカラは私たち大凪(おおなぎ)家に伝わるものだと言う。 遠い昔。私がまだそのチカラに気付いていなかった頃、祖母がそんな話をしていた。 「うちの家系にはねぇ、たまに『闇』が見える人がいるのよ。でも瀬里菜(せりな)ちゃんも菜弥美ちゃんも、そのチカラはないみたいねぇ」 その当時オカルトにハマっていた姉は、興味深そうに祖母に詳しい話を聞いていた。どうやら母や祖母にはそのチカラはないけど、祖母の母親、つまり私たちの曽祖母にはそのチカラがあったらしい。 そしてその曽祖母の親戚にも、似たようなチカラを持つ人が何人かいるそうだ。 「よくわからないんだけど、やっぱり遺伝かねぇ。そういう関係でチカラを持つ人が、うちの家系には不規則に現れるらしいの」 当時の私は、今では考えられないけど、そのチカラに少しだけ興味があった。多分魔法少女アニメの見過ぎが原因だと思う。 だけどこういう特別なチカラに感心が湧くのは、幼稚園児にしては普通なんじゃないだろうか。自分にはそんなチカラはないと知って、ちょっと落胆していた。 だけど、自分に本当にそのチカラがあったことに気づいたのは、小学校高学年くらいの頃だった。 人の胸のあたりが黒く見えることがたまにあって、なんだろう、と思っていた。 「ここ、汚れてない?」 そう言って指差すと、気味悪がられた。私にしか見えないんだと気付いてからは、自分で少し様子を見るようになった。そしてそんな中、祖母に久しぶりに会いに行ったとき、その話を思い出した。 私は人の闇を見ているんだと。 それを知った瞬間、特別なチカラを得た嬉しさより、不安が大きかった。 私はこれから人の闇を見て生きていくんだ。
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