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柏原くんのその意味深な一言に、それを聞いた男子が一瞬口籠もったのがわかった。 「あ……ああ。一応お前の能力が本物か試してみたいし」 「ほう。じゃあ教えようか」 どこから転校してきたのだろうか。私の周りにいる馬鹿な男子たちと人種違うんじゃない? そう思うくらい、柏原くんは落ち着き払っている。 「昨日僕が見た夢。それは……自分と同じように特殊能力を持った人と、このクラスで出会う夢、だった」 う、嘘でしょ⁈ 危うく叫びかけた。私はそのまま目を伏せたまま、完全に存在を消そうとしてみる。 「マジ?誰だよ?」という周りの男子の反応が怖くて仕方がない。そんな私を知るわけもなく、柏原くんはさらにこんなことを言い出したのだ。 「僕はその人を突き止めたい」 気づけば教室中に、またあの静けさが戻っていた。一人不思議そうなのは柏原くんだった。僕何か変なこと言いましたっけ、と言いたげな様子が、こっちにしてみれば呆れてしまう。 「……で、お前はそれでどうするつもりなんだ?」 「別に、その人と特殊能力を持つ人同士話してみたいだけだけど」 「はぁ……なるほど」 さすがに男子たちも、柏原くんの意味不明な言葉に、彼の印象が「面白い奴」ではなく「奇人」というふうに変わっていったようだった。 それにしても。 ヤバい。なんか絶対バレちゃいけない雰囲気になってきた。 私は体を硬直させたまま、次の授業が始まるのを待っていた。 事件はすぐに起こった。 それはその日の放課後のことだった。 部活動見学で、放課後も学校は賑わっていた。廊下を歩いているだけで、「テニス部来てください!初心者大歓迎でーす!」とか「新聞部もお願いしまーす!部員不足です!!」とか声をかけられて、とにかく勧誘には圧倒される。でも私はただ、目を伏せて足早に通り過ぎるだけ。 結局部活にはどこにも入る気はないんだから。私は放課後行くところがあるんだから。 「文芸部もどうですかー」 ちょっと控えめに、黒髪ロングの先輩が声をかけていた。多分その目は私を捉えている。だけど私はそのまま立ち去る。とりあえず視界から消す。 ああもう、邪魔。全部邪魔。みんなどっか行って。 すぐにこんな考えに陥る。よくないなと思いつつも階段を駆け降りる。普段の倍くらい時間がかかった気がするけど、どうにか学校から出ることができた。 この学校は部活に所属している人が多い方だと思う。だからと言って所属していない人が全くいないわけではないらしく、私と同じように下校していく人もいた。私はそのまばらな人の間を早足で歩いた。バス停は学校からそこまで遠くはない。
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