『Tsuki』

1/1
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ

『Tsuki』

「はい、今日はここまで……お疲れ様」 監督の声に追従するかのように、 「お疲れ様でした」と団員の声が一斉に レッスンルームに響き渡る。 「あ~疲れた、tsukiこの後どうする?」 団員仲間のひかるが彼女に声をかけると 「今日は、特に何もないからランチでも行く?」 とtsukiがひかるを誘った。 「うん、行く、行く。じゃあ、着替え済ませたら、正面玄関でね。」と言うとひかるは更衣室に歩いて行った。 「ふ~、今日も暑くなりそうだな……」 首にかけたタオルで額の汗を拭いながら、 tsukiは窓から空を見あげた。 『市原月』これが『tsuki』の本当の名前…… 子供の頃に親から連れて行かれた 『小さな劇団の公演』を観に行って以来、 『ダンサー』という職業に魅了され、 高校を卒業後は迷うことなく、 今の劇団の門を叩いたのだった。 彼女の所属する劇団『アソート』は、 上部と下部の二部に組織された劇団、 上部組織は、人気の役者が揃い 世界中で公演を行っている。 一方、tsukiが所属する下部組織は、 新人を中心とした若手で構成されて おり、地方や小さな劇場等で公演を 行っている。 下部組織であっても正式な劇団員の 彼女等は贅沢とは程遠いが つつましい生活が出来る程度の お給料を貰うことで生活を 維持することが出来ていた。 今年で22歳になるtsukiは、いつかは 自分も大きな舞台に立つことを夢見て 今日も踊り続ける。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!