束の間の再開

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「じゃあ、俺たちその辺、散歩してくるから、  二人は、ごゆっくり……」と赤星がライトとtsukiに伝えると、 天ちゃんを連れて公園から出て行った。 ベンチに座る二人……。 辺りは夜の静寂に包まれていた。 ライトが最初に口を開いた。 「元気そうだね? 今夜も練習してたの?」 「うん、そうだったんだけど」 「どうしたの?」 「今夜は、月が夜空に見あたらないでしょ?  だから、調子狂っちゃって……」 「そうなんだ」とライトが微笑む。 「うん、毎夜、ここで踊ってると、  月が私のことを見てくれてるような  気がしてたんだ。そして、優しい柔らかい  光を私に当ててくれる。  それがとても心地いいの。  あ、こんなこと可笑しいよね?」    彼女の顔を見つめていたライトは首を横に 振ると、「そんなことないよ…… tsukiからそんなこと言われると 『お月様』もきっと、喜んでいるよ」と言った。 静かな時間が流れる……。 今度は、tsukiが口を開いた。 「あ……あの、ライト。」 「ん? 何?」 「その……また、会えるかな?」 「……」 無言のライトに彼女が再度話しかける。 「わ、わたし、今度、劇団の上部組織に  仲がいい友人と一緒に異動が決まったの。  やっと、認められた……。  これからは、大きな会場の舞台で  踊ることができる。  だから、その……ライトに観に来てほしい。  私が、『舞い踊る』ところを……」 tsukiの話を聞き終えたライトが、ニッコリと 笑うと、「わかった、約束するよ……必ず、 観に行くから」と彼女に返事をした。 彼女の表情が笑顔に変わる。 「お~い、ライト、そろそろ時間だぜ」 赤星と天ちゃんが戻って来た。 「ああ、わかったよ」と言うとライトは ベンチから立ち上がった。 「tsuki、頑張って!いつも応援して いるから」ライトも笑顔で言った。 三人は、公園の出入り口付近に歩き出した。 tsukiはライトの背中を見送りながら、 「ライト、またね、待ってるから……」 と言った。 彼女が、ベンチに戻ろうとクルリと 身体の向きを変えた瞬間、公園内がピカッと 光った。 暫くすると、夜空には雲に隠れて いたかのように月がひょっこりと 顔を出した。
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