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『ライト』
今夜も、公園で踊るtsukiをそっと見つめる
ライト……。
「ライト、あの娘がそうなの?」
とライトの隣に並ぶ赤星が彼に聞いた。
「うん、そうだよ」
「他の奴等から聞いたよ、ライトが好きな娘に
告白も出来ず、恋煩いしてるって」
「なんだよ……。それ」ライトが語気を強めた。
「まぁ、まぁ、そう怒るなよ。
だって、気持ちを伝えず、毎夜、毎夜、
遠くからただ見つめているだけなんてさ、
これじゃ、まるでストーカーじゃん」
赤星が溜息をついた。
「仕方ないだろ?彼女と俺は『住む世界』が
違い過ぎるんだから……」
口をつぐむライト。
「まぁ、そうだけど……」
「彼女が屋外に居てくれるのであれば、
世界中の何処にいたって、僕は彼女のことを
見つけることが出来る、それに……」
「それに? なんだよ」
「それに、僕は一度だけ、彼女と話したことがある目の前に彼女がいて、ベンチで隣同士に座って、いつもは遠くからしか見れない彼女の顔、そして彼女の華麗に舞う姿を間近で見れて、僕はそれだけで幸せな気分になれたんだ」
「おまえ……本当におめでたいヤツだな」
赤星が呟いた。
『ライト』彼のことを仲間はそう呼ぶ。
『ライト』彼の正体は、夜空に輝く星々の真ん中に浮かぶ『まあるい月』。
半年前、『天空係』の手違いで一瞬だけ
『月の化身』となり地上に降ろされたライト、
尻もちをついた先には、雲の上から
いつもそっと見守っていた『tsuki』が立っていた。
もとの姿にもどったライトは、それからずっと
夜の公園で舞い踊るtsukiの姿を優しい光で
照らし続けていたのだった。
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