月が無い夜

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月が無い夜

「あれ?今夜は月は見えないのか……」 夜空を見上げ、tsukiが呟いた。 月が無い夜空は、暗闇……。 空に点在する星々も今夜は心なしか 輝きが少ないような気がした。 いつもは、月の光が当たる公園も 今夜は街灯の灯りのみで薄暗かった。 tsukiは、気を取り直すと、日課の 練習を始めた。 タタタン、タタタン、アスファルトを蹴る音が 公園内に響き渡る。 頭の上で交差して組まれた手、 しなやかに組まれた指先まで、 ひとつ、一つの動きから繊細さが伝わってくる。 何回も繰り返して動きを確認するtsukiだったが、ピタッと動きを止めた。 夜空を見上げると、 「月が見えないと、何か調子狂うな……  今夜は、月が見えないんじゃなくて、  『月がいないみたい』月の存在が無いような…… あれ?私何言ってるんだろう? そんなことないのに疲れてるのかな?」 額に流れる汗をタオルで拭きながらtsukiがそう呟いた。 いつも、彼女を照らし続けている『月』が いない今夜、暗い夜空には点々と輝く星が 月の代わりに彼女を照らしているようだった。 夜空では、星たちが呟く。 「おい、ライトは何処にいったんだ?」 「さあ、赤星までいないんだぜ……。  僕等だけじゃ、光の具合が弱すぎて……」  とぼやく星たち……。 「そう言えば、さっき、天空係の主任さん達が  天ちゃんを探してたよ……」 「ふ~ん、アイツ等一緒なのかな?」 星たちの呟きは風の音と共に消えていく。 一方、化身となったライト、 赤星、天ちゃんの三人は、 暗闇の空間を移動し続けていた。
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