秘密の空間で

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「僕ら、『天空係』の仕事は、 銀河系を常に巡回して 君達を見守り、異常などを 発見したりすること」 「ふ~ん、意外としっかりしたことを やってんのね」と赤星が呟く。 「う・おっほん、『意外』は余計だよ……。  で、中でも僕らの最大の仕事は、 銀河系を支配する大王様が、数百年に一度、 地球に降り立つ時間を調整することなんだ」 「大王様が地球に降り立つ?」 「うん」 「数百年に一度?」 「ああ、そうだよ」 「何で?」 「大王様は、全銀河系を支配する  全能の神様みたいなもの、数百年に一度  ある一定の期間、『人間の姿』となり、  地球、つまり、地上に降り立って、  『種』をまく。  その『種』は何万もの種類があるんだ。  要するに、地球にいる人類を含む  すべての『生物』、『植物』そして、  『自然界』」にありとあらゆる『種をまく』  大王様が無事に地上に降り立つことが  出来るようにお手伝いするのが、  僕たち『天空係』の重要な仕事だ」 「天ちゃんって、もしかして、 『エリート』なの?」 赤星が天ちゃんに聞くと、彼は、 得意気にメガネに手をかけ、 「まぁ、わかれば……いいよ、わかれば」 と返事をした。 「で、大王様が地上に降り立つ日が、  半年前のあの夜だったってことなのか」 ライトが天ちゃんの顔を見て呟いた。 「うん、あの夜は、小惑星でのトラブルや  色んなことがあって、普段は数人で  時間調整を行うんだけど、皆出払ってて、  僕一人が担当したんだ……。それで、操作を  間違えて……その、ライト君を地上に……」 「ふ~ん、そういうことだったんだね。   で、大王様は無事に地球に『種』はまけたの?」 ライトが聞くと、「ああ、すぐに間違えたことに気がついた僕は、 大急ぎで修正をして、 大王様にも、先輩方にも、誰にも気づかれず、 無事に大王様を地上に……」 「そうか……無事終了してよかったな」 と呟くライト。 と、その時、赤星が天ちゃんに尋ねた。 「天ちゃん、その時間調整操作?って  どのようなシステムになってるんだよ?」 「あ~、それはね……」クリスタルの中から、 タブレット式のモニターが降りて来た。 宙に浮かぶモニター画面のキーを操作する 天ちゃん……。 「これをこうして、あと、数字を設定して……  まぁ、こんな感じで、行き先等を入力して、  転送を押す。みたいな感じかな?」 宙に浮いた、モニターを見入るライトと赤星、 「なぁ、この数字の『90』って何だ?」 と赤星が尋ねると、 「これ? これは、地球時間の90分って 意味だよ。 君たちの説明用に今適当に入力しただけ だけどね」 「天ちゃんってすげ~な」 とライトの顔を見る赤星。 気を良くした天ちゃんが くるりと背を向けると、 「まぁ、僕は『エリート』だからね……」 と言いかけた時だった。 『転送……転送、システム作動、  カウント、3・2・』 突然システムが起動し、音声が聞こえた。 天ちゃんが驚いて後ろを振り返ると、 モニターの画面に指をつけている赤星の姿…… 「わぁっ! バカ……」と叫ぶ天ちゃん、 「1(イチ)GO」という音声と共に、 クリスタルの下にいた、ライトと赤星、 そして、天ちゃんの姿は閃光と共に消えた。
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