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束の間の再開
「今夜は、もうこれくらいで終わろうかな」
月が見えない夜空を見上げたtsukiが呟いた。
ベンチに置いた荷物を片付け、公園の出口に
向かって歩き出したまさにその時だった。
ドサ、ドサ、ドサ……。
彼女の耳に何かが落ちてきた音がはいってきた。
tsukiが恐る恐る音がする方へ近寄っていくと
そこには、三人折り重なるように
倒れている男性の姿。
「痛ったいな~、もう、何だよ、君は……」
「痛てててて、天ちゃん重いってば……
それに、一番上のライト!早くどけろよ」
「あ~、ごめん、ごめん」と身体起こし、
ライトが立ち上がると、目の前には
目を丸くしたtsukiが立っていた。
「あ……suki、久しぶり」
「ライト? どうして? ここに?」驚く彼女に
「え~と、これは……」と言いかけた時、
上にのっかっていた天ちゃんを払いどけ、
赤星が立ち上がった。
「やぁ、tsukiちゃん、初めまして、
俺、赤星……。ライトの親友。
君のことはライトから聞いてるよ。
そんで、こっちが天ちゃ、いや天童君」
天ちゃんも立ち上がると、ずれていたメガネを治し、
「初めまして、天童です。
ライト君と仲良くしてます」と自己紹介をした。
赤くフワフワした、高身長の赤星とメガネが
似合う文学青年のような雰囲気の天童、
そして、中性的な顔立ちのライト……。
tsukiの前に並んで立つ三人は、
とても個性的で
一目で注目を浴びるほどのビジュアル。
「初めまして、tsukiです。ダンサーをしてます。
ライト、とても個性的な友人がいるんだね。
何をされている人?」と聞いた。
「え~と、それは……」口ごもるライト。
すると、「俺は、ライトとは、年に一度、
そうだな~ 夏の時期にしか会えないんだ。
毎年、夏になると、ライトの隣に戻って来るんだ。
外国では、アンタレスって名前で呼ばれてる」
赤星が言った。
「バックパッカー的なことかな?」
とtsukiが質問すると、
「う……ん、まぁ、そんなとこ」
と答える赤星。
すると、天童こと、天ちゃんも、
「僕は、皆のことを巡回し、
平和を守る大切な役目を
仰せつかっております」と胸に手を当てた。
「刑事さん? それともSP?」とtsukiが尋ねる。
「そうですね、銀河系大王様を
お守り……んぐぐぐ」ライトが慌てて
天ちゃんを後ろから羽交い絞めにし、手で彼の口を塞いだ。
「まぁ、そういうことだね。
僕は、照明関係ね、物事すべてを照らす……。
あっ! 以前言ったから知ってるか」
とライトが言った。
「二人とも本当に個性豊か……」tsukiが
クスッと笑った。
「私、飲み物買ってくるよ……」そう言うと
tsukiが自動販売機の方向へ歩いて行った。
ベンチに座る、ライトと赤星と天ちゃんの
三人、
「おい、これから、どうするんだよ?」
と赤星が天ちゃんに話しかける。
「赤星君が、画面をタップするから
じゃないか」
語気を強める天ちゃん……。
「もしかして、僕たち、このままなの?
月が何日も夜空に浮かばないのは
いささか、まずいぞ」
とライトが聞いた。
「いや、画面設定で、時間を多分、
90分にしていたからえ~と、地上の時間で
1時間30分後に戻れると思う。」
「そうか」安心した顔をする
二人に天ちゃんが、
「多分、あと一時間くらいだよ……」
と言った。
「それにしても、さっきから
夜空の星々がうるさいよな~」
と赤星が呟くと、ライトも
「そうだよな~、僕たち、
さっきから小言を言われてるしな」と言った。
赤星がベンチから立ち上がると、前方に走っていき、
夜空を見上げ、「仕方ないだろ~、
たまたま『化身』になって、地上に
降りてしまったんだから……。
わかったよ、戻ったら、人一倍
働くから……」と大声で行っているのが
聞こえたきた。
そこへ、tsukiが飲み物を抱えて戻ってきた。
「はい、珈琲どうぞ」とライトと天ちゃんに
缶コーヒーを手渡した。
彼女が、少し離れた場所で夜空を見ながら
大声で叫ぶ赤星を見て、
「赤星君は大声だして何をしてるのかな?」
と不思議そうに二人に言った。
ライトと天ちゃんは互いに顔を見合わせると、
「さぁ~?」と言いクスッと笑った。
「月が見えない夜は、何か特別なことが
起こるな」と彼女が呟いた。
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