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『Tsuki』
「はい、今日はここまで……お疲れ様」
監督の声に追従するかのように、
「お疲れ様でした」と団員の声が一斉に
レッスンルームに響き渡る。
「あ~疲れた、tsukiこの後どうする?」
団員仲間のひかるが彼女に声をかけると
「今日は、特に何もないからランチでも行く?」
とtsukiがひかるを誘った。
「うん、行く、行く。じゃあ、着替え済ませたら、正面玄関でね。」と言うとひかるは更衣室に歩いて行った。
「ふ~、今日も暑くなりそうだな……」
首にかけたタオルで額の汗を拭いながら、
tsukiは窓から空を見あげた。
『市原月』これが『tsuki』の本当の名前……
子供の頃に親から連れて行かれた
『小さな劇団の公演』を観に行って以来、
『ダンサー』という職業に魅了され、
高校を卒業後は迷うことなく、
今の劇団の門を叩いたのだった。
彼女の所属する劇団『アソート』は、
上部と下部の二部に組織された劇団、
上部組織は、人気の役者が揃い
世界中で公演を行っている。
一方、tsukiが所属する下部組織は、
新人を中心とした若手で構成されて
おり、地方や小さな劇場等で公演を
行っている。
下部組織であっても正式な劇団員の
彼女等は贅沢とは程遠いが
つつましい生活が出来る程度の
お給料を貰うことで生活を
維持することが出来ていた。
今年で22歳になるtsukiは、いつかは
自分も大きな舞台に立つことを夢見て
今日も踊り続ける。
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