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「今日はあんまり怖くなかったなぁ。やっぱりあれだけ荒れてたら、人の気配が残っちゃって興ざめしちゃうんかな?」
「かもねぇ」
十分ほど、視聴者のコメントに答えながら、hiroとウタがおしゃべりをしている。
そのうちポタッとレンズに水滴が落ちた。
「雨だ」
「車載にする?」
「そうだな」
二人が廃墟近くに停めた車に向かう。NIGHTも機材が濡れてしまうのを避けるためか、布か何かをカメラに掛けたようで、画角が欠けた。
その画角の隅にhiroとウタが写っている。それともう一人分の下半身が現れた。闇に紛れていきなり現れたので、NIGHTが驚いて声を上げた。
「怖かったですかぁ?」
明らかに、同い年くらいの、二十歳前後の少女の声だ。
「あ、こんばんはー! 怖かったですよ〜」
hiroがわざとらしく嘘をつく。
けれど少女は笑って受け流し、そのまま廃墟に向かっていった。
普段ならNIGHTも第三者を撮ることは無かったと思うが、なぜかレンズは黒い着物姿の少女を追っていった。カメラは、少女が閉ざされた玄関を開けて中に入るのを捉えた。
「あれ?」
NIGHTが不思議そうにつぶやいた。
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