シーン2

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 おみず沼の周辺には、菟足少年自然の家の廃墟、菟足公園、美豆神社の神域とされる沼にせり出した畔と、沼に半分浸かっている鳥居がある。それ以外は手つかずの原生林に取り囲まれて、風光明媚なたたずまいを見せている。  県道をゆっくりと車を走らせて、廃墟や公園の外観を見ていく。おみず沼の東西南北には道祖神があって、廃墟の道祖神に至っては首と胴体を真っ二つに割られて壊されていた。  よく観察しようと、叶は路肩に車を停めて、デジカメを手に壊された道祖神に近寄っていった。  道祖神自体は比較的新しいもののようだ。真っ二つに割られた断面に苔が蒸していることから、ずいぶん前に壊されたと推測できた。台座は古く、いつからここに建てられていたのか、想像もつかない。元号か何か彫られてあればいいのに、と叶は残念に思う。  廃墟——菟足少年自然の家には、運営しているときからあまりいい噂はなかったようだ。叶が知っているだけでも、少なくとも数件の水難事故があり、運営困難に追い込まれた。
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