シーン2

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 美豆神社の鳥居や、せり出した神域の畔の画像をデジカメに納めて車に戻り、県道を道なりに行くと、魔のS字カーブと呼ばれる場所がある。トンネルを抜けてすぐの、見通しの悪いカーブにさしかかった。ここではS字カーブを曲がりきれず、事故を起こす車が年に何台もあるそうだ。なぜ事故が起こるのか、叶は不思議に思う。  唯一のカーブミラーが破損しているのに修理もされていない。対車と言うよりも、対人に向けて作られたカーブミラーなのだろうか。  凹んだガードレールのそばに、すでに雨に汚れた花束が置かれていて、灰色に汚れている。缶コーヒーやジュースなど備えられているところから、若者や子供が犠牲になったのかもしれない。  ガードレールの向こう側は崖になっていて、落ちたらおみず沼まで真っ逆さまだ。何人かの犠牲者がここからおみず沼に落ちたかも知れない。  それを考えると、カメラに収めるのは気が引けて、しんみりとしてきた叶は花束に向かって手を合わせた。
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