シーン2

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 おみず沼の遊歩道、公道より低い位置にある菟足公園は、沼を半周する細長い道で構成されている。遊具などはなく、休憩所の東屋(あずまや)と畔に組まれた、木材を模したコンクリートの道だけだ。整地される前なら、ここも原生林だっただろう。  おみず沼をぐるりと一周し、廃墟にあったものを含めた四体の道祖神が、おみず沼の東西南北に据えられているのにも興味を持った。道祖神がおみず沼を囲っているのには、意味があるのだろうか。  いったん、車を公園の駐車場に停めて、今まで撮った画像を確認する。何気なく眺めていたが、ふと気づくと画像の何枚かに人影が写っている。でも明らかに人間ではない。  尺的に異様に小さいか、遠近法を無視しているように大きいか、もしくはあり得ない角度から顔を覗かせて写り込んでいる。凝視しているうちに、右前の衿から和装の女性だとわかった。  顔立ちはなんとなく識別できる。モノクロの顔色をした、整った目鼻立ちの女性だった。長い黒髪で黒っぽい着物を着ている。
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