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君だけがいればいい
少し眉間にシワを寄せながら、書類を眺める横顔が好き。
どんなに忙しくても、ちゃんと目を見て話をする実直なところが好き。
甘いものを食べている時の、嬉しそうに細まる目が好き。
笠狭木の見つめる先で、織田が机上で震える携帯に気づき目を向ける。その表情に喜色が帯びるのを見て、笠狭木はそっと視線を外す。
──俺じゃない誰かを想う、あの顔は嫌いだ。
それでも、気がつくとまた織田を目で追っている自分に、自嘲の笑みが浮かぶ。
きっかけは、とても些細な事だったと思う。
ふとした表情が、仕草が、言葉が、笠狭木の中で温かいモノとなって集まり広がって、いつの間にか笠狭木の心を染め上げるほどに溢れていた。
恋人がいることも知っている。
だから、そっと想っているだけでよかったんだ。
──あの時までは。
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