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それから、あっという間に半年が過ぎ、
春くんの芸能界引退の日が来た。
あれから半年間、彼は仕事を一生懸命
こなしてきた。
「春…今までありがとうね…。
あなたのお陰で、私達夫婦は救われたわ。
あなたが、いなければこの芸能界でやって
行くことなんて出来なかった。
あなたが、私達の夢を叶えてくれたわ。
本当にありがとうね…。」
マネージャーは泣きながら、僕を抱きしめてくれた。
「こちらこそ、本当に長い間、お世話になり
ました。
お二人に出会えた事は一生の宝です。
僕の育ての親はお二人です。
お二人が、居なかったら僕は、
野垂れ死んでたと思います。
ここまで、支えてもらって、僕は
本当に幸せでした。
本当に、ありがとうございました!」
ぼくは深く頭を下げて、感謝を伝えた。
すると、監督が、何やらノートを持って
近づいて来た。
「春…。いや、今日からはもう、
春という名前を捨てなさい。
玲、お前に渡したいものがあるんだ。
これをお前に渡す時が来るとはな…。
お前のお父さんから預かったものだ!
さぁ、受け取りなさい。」
「えっ⁈これは…なんですか…?」
「これはな、レシピノートだよ。
いつか、玲と一緒に料理が作りたいって
お前の父さんが、よく話してくれたんだ。
大切な物だからって俺が金庫で、
預かっていたんだ。
玲が大きくなったら渡したいって
言ってたんだ。
だから、このノートはお前の物だよ!
大切に使いなさい。」
「そうだったんですね…。
僕の為に…父さんが…。」
僕は、涙がとめどなく流れて、止まらなかった
溢れる涙で、前が見えないぐらいだった。
僕はちゃんと愛されていたんだと、感じる
事ができた。
「ありがとうございます…。
僕、絶対に弁当屋さん開きます!
修業を積んで、一人前になったら
絶対に食べに来て下さいね!
僕の唐揚げ弁当、楽しみにしていて
下さい!」
「あぁ、約束するよ!
だから、絶対に成功させるんだぞ!
芸能界で、鍛えたガッツで何でも
乗り越えて、一人前になれよ!
応援してるぞ!
玲!今までありがとうな!お疲れ様!」
「はい!
ありがとうございました!」
こうして僕は、芸能界を引退した。
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