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「お願い、そばにいて……」
そう言って僕の腕を掴む君が、どうしようもなく愛おしくて。
涙で潤んだその瞳にいつまでも映っていたいと、強く思った。
——だけど、だから。
「蓮見さん、ごめん」
全身を駆け巡る情動を押し殺して、喉から声を絞り出す。
「僕はもう、君と会わない」
「……汐田くん?」
「さようなら」
目を丸くした彼女に背を向け、学校に向かって走り出した。足を踏み出すたび、落ち葉の乾いた音が響く。土色に染まっていくスニーカー。押し潰されるような肺の痛み。
「汐田くん!」
息苦しそうに座り込む彼女を置いて去ることが、正しい選択なわけはない。
だけど、自分の中に生まれたおぞましい感情から逃れるために、こうせずにはいられなかった。
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