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時は遡るほど3ヶ月前。廓は賑やかになって客の入りも満席になっていた。
女将が玄関先で客に謝罪していた。
「すみません!今日はお部屋の用意もできず、つかせる子もいないのです。」
急にやってきたその客は会社の社長をしていて、無闇に帰すわけにいかなかったのである。
「今日は、おもてなししたい社長をお連れしたのだ。早く準備しろ!」
「まあまあ、違うところにしましょう。」
「月野社長。大丈夫です。なんとかしますから。」
「お母さんやっと1部屋空きました。」
そこに、この廓つきの色子が女将を呼びにきた。
「かすみ!あんたしかいないのかい?!」
「すみません。みんな出払っていて。」
「お客様、かすみでございます。よろしくお願いします。こちらへどうぞ。」
「あ、君、山崎じゃないか?」
社長達の後ろにいた青年がかすみに話しかける。
「もしかして、ホタくん?!」
これが、2人の久しぶりの再会だった。
「お前達知り合いだったのか?じゃあ、積もる話もあるだろうから、私達は2人で違う店に行くよ。」
「お父さん、そうさせてください。」
女将が焦る。
「あの、それじゃあ、お席を用意したお代が…。」
「そこは、これで。」
札束を渡された女将が蛍とかすみを部屋に行くように促した。
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