イトshe

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 遺書のように小説を描く。 誰にも受け入れられない事実を、それらしい言葉として並べて、並べた言葉をあの日出逢った少女と重ねる。 二十六年目の私の人生は、退屈さと憂鬱に溢れていて、生きていることにすら実感が湧かない。 無駄に広い部屋は数年前までの同棲の名残。空いたペットボトルと仕事着が脱ぎ捨てられている空間で独り、パソコンを開く。  高校を卒業してすぐに上京し、就職。 平均的な給料に不自由のない生活、可もなく不可もない容姿と当たり障りのない人間関係。三つ年上の彼氏の影響でお酒と賭け事を覚えた。 心地よく世間に埋もれていられた頃が懐かしい。夢を追う選択を取らなければ、私の人生はきっと真っ直ぐなままだった。  誰もいない空間に響くタイピング音は、変わらず虚しい。自分への後悔と恨みを突き刺さすような鋭い音。 有限な命の残量をこんな作業に費やしていいものか、自問自答を繰り返すが答えは出ない。
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