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山には、人間に化ける動物が住んでいるといわれています。
そのむかし、山菜を取りに入った若者が、こまっていた娘を助けて家に連れ帰ったところ、なんとそれは人間に化けた狸だったのです。
物置小屋に積んであった食べものをすべて持っていかれてしまったものですから、ときおり山狩りがおこなわれるようになってしまいました。
鉄砲をかかえた猟師が罠をしかけ、つかまってしまう狸もたくさんいます。
山の奥深くにこっそりと住まう狸の里では、大人の狸が子どもたちに言い聞かせるのです。
いいかい、おまえたち。
人間は、我々狸たちをつかまえて、あげくのはてに食べてしまう、それはそれはおそろしいヤツらなのだ。
おっかない人間たち。近づないに越したことはありません。
けれど、化かすこともまた、彼らの性です。
いかにうまく化け、溶けこむか。
それが、狸の矜持というものでしょう。
化かし合いという名の攻防は、いまもずっと、長くつづいているのです。
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