17人が本棚に入れています
本棚に追加
声のした方向を見ると、
路地裏で、派手な服を着た男が
シャツを着崩した男子を殴り飛ばしていた。
うわ。
近くにいた人々は素知らぬフリをしている。
それが正解だ。
私はさっと目を逸らし、聞き耳を立てる。
「よくも俺の女に手を出したな!!」
痴情のもつれか。
「いてて……あーごめんねぇ。オレモテるからさー
勝手に女の子寄ってきちゃってー」
どこかで聞いたような声だな……
ていうか何言ってるんだ、コイツ。
火に油注ぐようなことを言って!!
何かが崩れるような音がした。
ゴミ袋が散乱しているなか
派手男が男子に馬乗りになり、今にもナイフを
振り下ろそうと……。
ちょ、それはまずいって。
私は咄嗟にスマホを取り出した。
「警察ですかっ!!」
派手男は私を見て固まった。
「喧嘩している人達を見かけまして! 住所はっ」
派手男は本当に通報をしていると思ったのか
青ざめ「チッ、覚えてろよっ!」と
悪役のような捨て台詞を吐いて走り去っていった。
上半身を起こした男子は私を見て呆然としている。
近くに脱ぎ捨てられたブレザーが視界の端に映り、
ハッとなる。あれ、うちの学校の制服だ。
まずい。
顔を隠すように後ろを向く。
「冬川さん?」
……終わった……。
最初のコメントを投稿しよう!