プロローグ

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プロローグ

 透きとおるような甘い香りが  ツンと鼻の奥を突き抜ける  真上に光る太陽は  ゆらりゆらりと影を揺らす  ああ、あなたに逢いに行きたい  しかし距離は開いてく  口から溢れる泡だけが  僕を置き去りに飛び立っていく  もう、僕はこの世界の住人さ  そうして瞼を閉じかけた時  かすかに残った陽光が  影絵のように”彼女”を作った 「あなたはここにいるべきではない」  扇子のような尾びれを扇ぎ  僕にその手を差し伸べた  息苦しさも忘れてしまい 「あなたは誰?」僕は尋ねた  彼女は僕の手を取ってこう告げる 「人魚」──と
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