プロローグ~追放された悪役聖女、リベンジを誓う!~

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「まだお前の処遇を述べていないぞ、ベアトリス・バレリー」   「わたしは知らなかったの……まさか、あれが、呪具だったなんて……」   「知らなかったから許されるとでも思ったか、愚か者め。お前は呪具でセレーナから力を盗み、心を傷つけ虐げてきた。己の愚かな悪行の報いをしかと受けるがよい」   「フェルナン殿下、お願いですから、もう一度調査と弁明の機会を……!」    ベアトリスの必死の懇願を、フェルナンは「却下」という一言で拒絶した。    そして「お前には心底失望したよ」と溜息をついた後、無慈悲に告げた。   「ベアトリス・バレリー。この場で、お前との婚約を破棄する。さらに、呪具使用の罪で王都から追放。大鉱山での強制労働を命じる──!」      禁固刑より過酷で辛い強制労働の刑。  しかも追放先は、劣悪で過酷とされる大鉱山の採掘現場。  ベアトリスはもはや叫ぶ気力もなく、抜け殻のように項垂れた。  そこに、今一番耳にしたくない女の声が聞こえてくる。   「あぁ……強制労働だなんて……わたし、ベアトリスが心配です……」 「散々虐められてきただろうに、そのような慈悲深いことを言うとは、なんて心優しいのだ。君こそ真の聖女だ、セレーナ」   「わたしは誰も、傷ついてほしくないのです……。それに、ベアトリスはわたしの妹ですから」  ベアトリスはたまらず「ハッ」と嘲笑した。  虐められても我慢強く耐え忍び、最終的に悪者を許してしまう健気で優しい女の子(セレーナ)。    物語の真の主人公であれば応援できるけれど、現実ではこうもあざとく腹立たしいものなのね。   「被害者ぶるのはやめなさいよ。本当は全部、貴女が仕組んだんじゃないの?」 「そ、そんな……ちがいます……」  セレーナがか細い声で否定する。  ベアトリスは力づくで部屋から連れ出された──。
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