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「わたしはもう大丈夫ですから、どうか……」
「いいや、まだ駄目だ。完全に身の危険が排除できるまでは、もうしばらく隠れていてくれ」
「…………そう、殿下がおっしゃるのなら……」
「セレーナ、分かってくれてありがとう。というわけだ、ベアトリス。あともう少し影武者を頼んだぞ!」
ここで『えー、嫌です、もう解放してください』と申し出ても、どうせフェルナンは聞き入れてはくれないだろう。
仕方ない、乗りかかった船。最後まで仕事を完遂して、後腐れ無く成功報酬をいただこう。
「殿下。本当に、あと少しですよね? 無事に視察を終えたら、今度こそ私はお役御免。すみやかに契約を履行してくださいますか?」
「ああ、約束する」
「それでは、ここまで頑張ったのですから一旦、ご褒美をください」
「はあ? 褒美? 全く抜け目がないというか、えらく欲深い奴だな。……一応聞いてやる、なにが欲しいんだ?」
「お父様に会わせてください。聞いたところによると、父は今、来月視察に行くヘインズ公爵領の監獄にいるのでしょう? 数分で良いので、面会時間をください」
フェルナンは眉間にしわを寄せ、腕組みをして考え込んだ。
「…………分かった。検討する」
(了承ではなく、検討? どうしてここまで渋るのかしら?)
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