2章:トラブルだらけの身代わり契約

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「うそつき」    自分のものじゃないような、ぞっとするほど低い声だった。 「フェルナン殿下のうそつき!」  ひとこと発したら、次から次へと恨み言が口からこぼれ落ちる。 「このまま、わたしを遠ざけるつもり……? まさか、今さらベアトリスの方が良いとか思っているんじゃないわよね。冗談じゃないわ、ここまでわたしがどれほど苦労したと思っているのよ」  あぁ、だめよ。聖女は清らかで、慈悲深い心を持っていなくちゃ。心が汚れたら、聖なる力が失われてしまう。  セレーナは心を落ち着かせると、両手を胸の前で組み、神に祈った。 「あぁ、神様……」  ──フェルナン殿下の愛を疑ってしまい。   「すみません……」  ──わたしのことを嫌う王妃様を(わずら)わしく思って。   「すみません……」    ──目障りなベアトリスを、殺したいほど憎んで……。   「すみません」  ──心から謝罪しますから、どうかわたしの心が。 「綺麗なままでありますように」
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