3章:転機の領地視察

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「わたしになにかご用……?」 「あっ、憧れのセレーナ様がどのような本を読んでいるのか気になってしまって。不躾(ぶしつけ)に申し訳ございません!」 「いいえ、謝らなくて大丈夫……良ければ、こちらで一緒に読書をしましょう」 「よろしいのですか!?」 「ええ、もちろん」  見習いたちが無邪気に駆け寄ってくる。    彼女らが抱えている本を見て、ベアトリスは「あら、それって聖女認定試験のテキスト?」と尋ねた。 「はい。私たち筆記試験を受けるつもりなんです」 「そうなのね。わたしで良ければ、分からないところを教えるわ……遠慮なく、聞いてね」 「あ、ありがとうございます!」  見習たちが緊張の面持ちでペコペコ頭を下げる。    同じテーブルで読書会を始めたものの、彼女たちは完全に萎縮しており全く話しかけてこない。  その様子に、逆に気を遣わせてしまったのかもと申し訳ない気持ちになってくる。 (う~ん、打ち解けるにはどうすれば良いのかしら)  セレーナに化けているからといって、中身は口下手なベアトリス。  すぐに社交性が身につくはずもなく、場を和ませるような話題など思いつかない。  し~んとした空間で居心地の悪い思いをしていると、それまで黙って壁際に控えていたユーリスが小さな紙を差し出してきた。  そこには達筆な字で『趣味』という単語が書かれている。   (なにこれ? 暗号??)
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