3章:転機の領地視察

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 ベアトリスが不思議に思っていると、ユーリスは切れ長の目を見習いたちの方へ向けた。    視線をたどりテーブルの上を見れば、テキストに紛れて恋愛小説が置かれている。 「ハッ! それは……! 『恋の魔術師』と名高い大先生の新刊……!」  気付けばベアトリスはそう口走っていた。 「えっ、セレーナ様もこの先生の本がお好きなのですか?」 「ええ、大好き……! その『黒騎士と黄金聖女の許されざる恋』シリーズは特に! 貴女たちは何巻がお好き?」 「私は、ふたりが愛の逃避行をする三巻です!」 「わたしは今日発売されたこの最新刊が一番好きです! もしまだお読みになっていないのなら、お貸しいたしましょうか?」 「えっ、いいの? 嬉しいわ……! ありがとう……!!」  共通の話題で一気に会話が弾み、気付けばベアトリスたちは一時間近くもおしゃべりをしていた。 「この本、読み終わったら、すぐにお返しするわね」 「はい! あの、セレーナ様、また話しかけてもよろしいですか?」 「ええ、もちろん。それじゃあ、みなさん、お勉強がんばってね……!」   「ありがとうございます、セレーナ様!」    見習いたちとの距離は一気に縮まり、ベアトリスは恋愛小説を胸に抱いて、足取り軽やかに私室へ戻った。
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