3章:転機の領地視察

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 ユーリスとふたりっきりになった瞬間「やった~!」と言って飛び跳ねて喜ぶ。 「私、人とこんなに楽しく話せたの初めて! すっごく楽しかったぁ~」 「それは良かった」 「全部、ユーリスのアドバイスのおかげだわ! 貴方って、本当にいい人ね! 大好き!!」  湧き上がる喜びのまま感謝を告げて、ベアトリスはさっそく借りた本を読み始めた。      ✻  ✻  ✻    一方、突然『大好き!!』と言われたユーリスは不意打ちを食らい、その場で立ち尽くしていた。    驚きのあまり心臓がうるさいほど高鳴っている。    告白めいた言葉と可憐な笑顔を思い出すたび、じわりと頬が熱くなるのを抑えきれない。    常に冷静さを失わないよう己を律して生きてきたのに、ベアトリスの一言でいとも簡単に心を揺さぶられてしまう……。   (なんだ、この気持ち。まさか、俺は…………)  心の内にいつの間にか芽吹き、知らぬ間に花を咲かせていた感情にひどく戸惑う。    そんなユーリスの内心など知るよしもないベアトリスは、自分が無意識に告白をしたことにも気付かず、鼻歌を歌いながら小説の中のロマンスを堪能するのだった。
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