3章:転機の領地視察

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 それでも、目の前に悩める後輩がいるのなら、悔いが残らないように今できる事を精一杯やろう。    そう決意したベアトリスは、今日も迷える見習いをひとりでも救うべく、講習会の壇上にあがるのだった。 「今日は、魔道具を作る練習をいたしましょう。これは魔水晶と呼ばれる、神聖力を込めやすい鉱物です。これに守護の聖魔法をかけると……」  ベアトリスが透明な水晶に手をかざして詠唱すると、まばゆいばかりの光を放ちながら虹色に輝き始めた。 「このように魔水晶が結界の魔道具に変化しました……。これを作って魔物から街を守るのも聖女の役目です。さぁ、みなさんもやってみましょう……!」  熱心に魔道具作成の修行にいそしむ見習たちを、微笑ましく見守る。 「セレーナ様、できました!」 「わたしもできました!!」  無邪気に慕ってくれる見習いたちが可愛らしくて、ベアトリスは「よくできました」と微笑み返した。    神殿の制度改革と後進の育成に邁進する日々は、忙しくも充実している。    毎日が夢のように幸せだけれど……。   (私の努力とみんなからの信頼は、全部セレーナのものになるのよね)
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