3章:転機の領地視察

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(傲慢で偏屈ですっごく嫌な奴だと思っていたけど、この人も色々と大変な思いをしているのね) 「『アランには絶対に負けてはいけない』と母上に言われ続けてきたが、正直に言うと勝てる気がしないのだ。いつも精一杯虚勢を張ってそれらしく見せているが、俺は王太子の器ではないのかもしれないな……」  フェルナンは視線を落とし、諦めたように自嘲する。    興味などなかったはずなのに、気付けばベアトリスは話に聞き入っていた。  なぜなら彼の境遇が自分によく似ていたから。 「私、貴方の気持ち……少しだけ、分かるわ」 「お前が?」 「私も本当は、セレーナみたいにか弱い女の子でいたかった。でも立場とプライドが邪魔をして、ついつい可愛げのないことを言っちゃうから、自分にないものを持っているセレーナがずっと羨ましくて、正直嫉妬もしていたわ」 「そうだったのか……知らなかった……。なぁ、お前は、自分より優秀な姉弟(きょうだい)に勝つためには、どうすべきだと思う?」  少し考えた後、ベアトリスは答えた。 「別に、勝たなくてもいいんじゃない?」  
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