3章:転機の領地視察

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「……なんだと?」  眉をひそめるフェルナンに、ベアトリスはしみじみと続けた。 「他人と比べるのはやめたわ。だって、自分が辛くなるだけだもの」 「自分が辛くなる、か。たしかに……そうだな」  なにか思うところがあったようで、フェルナンは腕組みしてそう言ったきり、一言もしゃべらなくなった。  ✻  ✻  ✻  小腹が満たされて眠くなったようで、向かいの席に座るベアトリスがうたた寝を始めた。それを見て、子供みたいな奴だな、とフェルナンは苦笑する。  婚約者として紹介された時、フェルナンはベアトリスではなく、その後ろに控えていたセレーナに目を奪われた。  泣いている彼女を偶然見かけ、密会を繰り返すようになってからは、守ってやりたいという想いが募るばかり。  妻にするのなら、可愛げのないベアトリスではなく控えめで健気なセレーナの方が良いのに……と何度思ったことか。  だが、理由もなく国王(ちちうえ)の決めた縁談を破棄できない。    フェルナンはセレーナに別れを告げようとしたが、その日、突然の相談に出鼻を(くじ)かれた。
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