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フェルナンが重い口を開きかけたその時、ガタンと馬車が大きく揺れて、目的地の公爵邸に到着した。
「あぁ、着いたようだな。今の話は夜会の後にしよう」
フェルナンが逃げるように馬車を降りると、ベアトリスは胡乱な目でこちらを見ながら、渋々といった様子で頷いた。
それぞれ身支度を整え共に大広間に入ると、当主のヘインズ公爵がすぐさま大仰な仕草で近づいてくる。
「おお! これはこれは、フェルナン殿下、それにセレーナ聖女。遠路はるばるお越しくださり、ありがとうございます」
「久しいな、ヘインズ卿」
フェルナンと公爵は互いに表向きは和やかに……だが水面下では絶えず腹の探り合いをしながら話を始める。
するとそこに、高身長の男性が颯爽と現れた。
「あぁ、殿下にご紹介いたします。こちらは、数日前から我が家に滞在している共和国の伯爵様でございます」
ヘインズ公爵から紹介された貴族が、さっそく共和国語で矢継ぎ早に話しかけてくる。
とりあえず頷きながら聞いてはいるが、正直なところ、早口過ぎて何を言っているのか全然分からない!
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