3章:転機の領地視察

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 ベアトリスは自身が話すだけでなく、まるで通訳のように会話を自然に繋げ、仲を取り持ってくれる。  おかげでフェルナンは赤っ恥をかくことなく、最後には握手をして共和国貴族はご機嫌に去って行った。もくろみが外れたヘインズ公爵は悔しげに眉間にしわを寄せ、ふん!と鼻息荒く退散する。  フェルナンはベアトリスに身を寄せ、コソッと尋ねた。 「お前、共和国語が話せたのか!?」 「ええ、日常会話程度なら。幼少の頃から習っていたので」 「そうだったのか、知らなかったぞ。それより、さっきの公爵の悔しそうな顔を見たか? まさか俺の婚約者がこんなにも有能だとは、完全に誤算だったのだろう。ハッハ、いい気味だ!」 「殿下、“本物”は共和国語を話せないので、怪しまれないよう用心してくださいませ」 「ああ、そうだな。“本物”にも学ばせなければいけんな」
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