3章:転機の領地視察

23/54
前へ
/230ページ
次へ
 今回、隣にいたのがベアトリスで本当に助かった。    セレーナであれば一言も話せず、ふたり揃ってヘインズ卿に馬鹿にされていただろう。 「先程からあの方がこちらを見ていますわ。きっと、殿下とお話したいのではないかしら?」 「おお、本当だ。よく気付いたな」 「鉱山で何ヶ月も囚人と対等に渡り合って暮らしていましたから、人間観察が得意になったようです。さぁ、参りますよ」  そう言ってフェルナンの腕に手を添えるベアトリスの存在が、とても頼もしかった。 (セレーナとは、大違いだな)  教育係にほんの少し注意されただけで部屋に閉じこもり、母上に叱られたら泣き崩れて熱を出す。淑女教育は進まず、公務はほとんど欠席のセレーナ。  その点、ベアトリスはどんな困難にも一緒に立ち向かってくれる。戦友(とも)を得たかのような心強さだ。  
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1049人が本棚に入れています
本棚に追加