1049人が本棚に入れています
本棚に追加
(ベアトリスと共にいるのも、悪くないな)
その後も宴はつつがなく進み、明日からの会談に備えて早々にお開きとなった。
ベアトリスの優れた補佐のお陰で、初日の挨拶回りを完璧に終えられたフェルナンは、ほろ酔い気分も相まって有頂天になっていた。
(まだ飲み足りないな。そうだ、労いもかねてベアトリスの所へ行こう)
思いつきのまま護衛も連れずベアトリスの部屋を訪ねると、なぜかユーリスが室内から姿を現わした。
「なぜ、お前がここにいる?」
「至急ベアトリス様のお耳に入れたい事がございまして、参上いたしました」
「至急? どんな要件であれ、夜更けに俺の婚約者の部屋に入るなど言語道断。慎め、無礼者めが!」
フェルナンが唾を飛ばして怒鳴ると、ユーリスがすっと目を細め低い声で呟いた。
【──今は、アンタの婚約者じゃねぇだろ、このペテン師が】
最初のコメントを投稿しよう!