3章:転機の領地視察

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 ユーリスの囁きが聞き取れなかったフェルナンは、思わず眉をひそめた。    発音からして共和国語だろう。意味は分からないが、なんとなく悪口を言われたような気がする。 「お前、今なにを言った!?」 「お見受けしたところ殿下は酔っておられるご様子。もう遅いですし、お休みになられた方がよろしいかと。それでは、これにて」  こちらの質問には一切答えず、ユーリスが淡々と部屋のドアを閉めようとするが、フェルナンはとっさに扉の隙間につま先を入れて阻んだ。 「イテテテッ!! 痛い! 開けろ、そこを退け! 俺はベアトリスに用があるんだ!」  立ちはだかって譲らないユーリスにイライラしていると、部屋の奥から「お通しして」というベアトリスの声が聞こえてきた。 「どけ!」  
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