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なにも言えずに立ち尽くしていると、ユーリスは丁寧でありつつも有無を言わせぬ力強さでフェルナンを追い出し、無慈悲に部屋の扉を閉ざした。
☩ ☩ ☩
翌日、ベアトリスは部屋に引きこもってしまい、フェルナンは焦った。
議会後の宴にひとりで出席すれば、敵対派閥の貴族から陰口を叩かれ、王太子としての威厳が失墜するのは火を見るより明らかだ。
なんとしてでもベアトリスを部屋から引きずり出さねば……と、夜会のことばかり気にしていたフェルナンだったが、真に心配すべきは議会の方であった。
バレリー卿の件が議題に上り、貴族会議は今まさに荒れに荒れている。
「移送中の罪人が失踪したとの報道は本当ですか? であれば、これは由々しき事態ですぞ!」
貴族の糾弾に、ヘインズ公爵は淡々と説明した。
「ええ、残念ながら報道は全て事実。我が領でこのような事になり、誠に遺憾に思っております。わたくしは大々的な捜査をと進言しましたが、王室の方々が『国民の混乱を招かぬよう、事実を伏せよ』とおっしゃいまして……」
「では、王室が事実の隠蔽をしたと? フェルナン殿下、そうなのですか!?」
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