3章:転機の領地視察

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「俺は王太子であり次期国王であるぞ! 王位継承権を放棄した異母弟(アラン)と比べて侮辱する不敬、到底許されることではない!」  フェルナンは背後に立つ衛兵から剣を奪い取り、鞘から刀身を引き抜いた。 「その罪、死をもって償え!」  辺りが一瞬にして騒然となり、護衛がフェルナンを止めるべく叫ぶ。 「殿下ッ! どうか、剣をお収めくださいませ!」 「うるさい、黙れ! 言葉を発した奴は誰だ! さっさと出てこい! さもなくば、ここにいる全員、残らず切り伏せてやるッ!」 「殿下がご乱心なされた……」  怯えと呆れの混ざった囁きが聞こえてくる。 (俺は次期王だ。アランには負けられない!)  感情まかせに剣を振り回したその時、ふと脳裏にベアトリスの声が響いた。      ──『別に、勝たなくてもいいんじゃない?』      フェルナンは剣を持ったまま、立ちすくむ。  自分は本当にこのままで良いのだろうか……? (もし隣にベアトリスがいてくれたら……止めてくれたのに……)  途方に暮れていると、ふいに会議場の扉が開き、ひとりの女性が入ってきた。    緩やかに巻かれた赤毛の長髪に大きな瞳、控えめに微笑む彼女は──。 (ベアトリス……来てくれたのか……!)  
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