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会場を後にしたふたりは、人払いを済ませた部屋で再会を喜び抱き合う。
「君のおかげで助かった」
「お役に立てたのなら……嬉しいです」
彼女のいじらしい姿を見ると、やはり自分が好きなのはセレーナなのだと実感する。
「わたし……もう、殿下と離れたくありません……」
「俺もだよ、セレーナ」
「それでは……身代わりは、もう終わりで……良い、ですよね?」
フェルナンがうなずくと、セレーナは嬉しそうに微笑み涙を流した。
「泣かないでおくれ」
「すみません……わたし、とても怖くて……あの子は、いつもわたしの大切なものを奪うから……殿下の心がベアトリスに向いてしまうんじゃないかと……」
セレーナが不安そうにこちらを見上げ、フェルナンの手を取って婚約指輪を撫でる。
内心、ぎくりとした。
事実、ベアトリスに心が傾きかけ、隣にいて欲しいと願っていたからだ。
フェルナンは不埒な己の心を隠すため、わざとベアトリスのことを悪しざまに罵った。
「やめろよ。あんな自己中心的で高飛車な女、俺が好きになるわけないだろう。今だって、俺が大変な思いをしているのに、まったく役に立たない!」
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