1049人が本棚に入れています
本棚に追加
悪路が続いているのか、馬車はガタゴトと大きく揺れながら監獄を目指しひた走る。
両手足に拘束具をつけられ、ぞんざいに護送車両に乗せられたベアトリスは、薄暗闇の中で怒りを込めて呟いた。
「今回も、そして前回も……やっぱり全部、貴女の仕業だったのね」
──セレーナ
☩ ☩ ☩
時は遡り、ベアトリスが殺人未遂の罪に問われる直前。
ベアトリスの部屋に騎士のポールがやってきた。
「ユーリス副団長、騎士団長がお呼びです」
「騎士団長が?」
「はい。実は議会中に殿下がいきなり剣を抜きまして、居合わせた貴族が騒いでおります。事態の収拾のため、ユーリス副団長にも来て欲しいとのことです」
「そうか……」
ポールの報告を聞いたユーリスが気遣わしげにこちらを振り返る。心配そうな彼に、ベアトリスは精一杯の明るい笑顔を向けた。
「私は大丈夫だから、行ってきて」
「だが……」
「本当に、もう大丈夫だから」
父の失踪を知り、ベアトリスはひどくショックを受けていた。
にもかかわらず、フェルナンは何度も部屋の前に押しかけてきては「ひとりで夜会に出るのは外聞が悪い!」「おい、早く機嫌を直せよ」などと喚き散らし、強引にベアトリスと面会しようとした。
そんなフェルナンを宥め、守ってくれたのがユーリスだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!