1章:悪役聖女の脱獄計画《プリズン・ブレイク》!

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 昔はこの程度の傷なら手をかざすだけで治せたのに、今では意識を集中させて全力を注がなければいけない。最近は怪我人を治療するたび、聖魔力の衰えを痛感している。 『呪具を用いてセレーナの神聖力を奪っていた』とフェルナンに言われた時、ベアトリスは信じなかった。 (間違いなく私は、自分の力で上級聖女まで上り詰めた。絶対にセレーナの力じゃない)    そう思いたいのに、現に今のベアトリスの力は神殿にいた頃の半分以下。 (これが本来の実力なの……? 本当に私は、セレーナの力を奪って能力を底上げしていた……?)  追放と断罪、刑期延長に加え、自身の実力と才能に疑念を抱いたベアトリスは、すっかり打ちのめされ自信喪失していた。   「……ふぅ、……終わったわよ」  たった一度、治癒の聖魔法を使っただけなのに、力がごっそりと削がれ目眩がする。 「こりゃあ、すごい! 綺麗さっぱり治っておる。てぇしたもんじゃ、ありがとうなぁ」  ボサボサの白髪とひげの老人は、嬉しそうにベアトリスに笑いかけてきた。 「大したことじゃないわ」 「こんなにあっという間に治しちまうなんて、医者でも無理じゃよ。アンタは本当にすごい聖女様だ! ありがとう」  老人の純粋な感謝の言葉が、絶望してボロボロに傷ついた心にしみる。  思わず泣きそうになり、ベアトリスは顔を背けた。その時、再びクラッと目眩がして、ベッドに片手をつく。
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